収縮速度と関係するようなダイナミック動作は、温度に依存する性質をもちます。
筋温を正常な生理学的レベルである37℃にまで上昇させることは、神経伝達速度と受容体の感受性を高め、運動学的・運動力学的要素に有益な効果をもたらし、それが長期的適応に影響を及ぼすと考えられています。
しかし、一定の閾値より上または下の温度では、筋機能に抑制効果をもたらすことについては注意が必要です。
例えば、最大動的筋力、発揮パワー、ジャンプやスプリントのパフォーマンスは、筋温と相関関係があり、1℃あたり4〜6%の変化があらわれるとされています。
最大等尺性筋力は、筋温が1℃下がることに2%低下し、力-速度関係は、筋温が正常値以下になると左方向へシフトしました。
また、ラットを用いた研究においては、速筋遅筋ともに、筋温が35℃から30℃、25℃、15℃、10℃と低下するのに伴い、力学的な等尺性筋力が35〜42%、速度が83〜89%、最大パワーが63〜64%低下しました。
さらに、筋温の上昇は、筋腱複合体の弾性を高めることによって、能動的にも受動的にもその剛性に影響を及ぼし、筋の仕事量や筋の特性に有益な効果をもたらす可能性があります。
例えば、60%強度の有酸素運動を行ったところ、筋の直列弾性要素が低下し、それによって筋コンプライアンスが増大したことが明らかになっています。
コンプライアンスの高い筋ほど、必要な力を発揮する上で、腱などの受動的要素が収縮などの能動的要素の疲労を補うため、力学的疲労への抵抗に優れている可能性が考えられます。
筋温を運動に最適なレベルに上昇させることは、力学的効率を32〜34%に高めることも明らかになっています。