一般的に急性痛と慢性痛の違いといわれたら、時間経過の差であると思われるかもしれませんが、実はそうではなく、大事なのは痛みの発生機序の差がポイントになります。
痛みの多くは一過性である場合が多く、基礎疾患や原因が治癒するとこの痛みも消失します。
このような痛みが急性痛(acute pain)であり、病変組織に分布する痛覚線維が刺激されることで発生します。
病変がある部位を動かすと痛みが強化され安静が必要だと知らせてくれたりするあの痛みです。(これを警告信号といったりします。)
一方、慢性痛(chronic pain)は急性疾患の通常の経過や創傷治癒に要する妥当な時間を越えて持続する痛みのことをいいます。
従来は、急性痛の長引いたものが慢性痛とされてきましたが、近年両者が単に時間経過で分類できるものではないとわかってきました。
急性痛に対して、慢性痛は組織の傷害が消失した後でも、正常では痛みを引き起こさない程度の軽い刺激や交感神経系の興奮、あるいは心理的要因によって痛みが出現するようになります。
また、慢性痛があると生体のホメオスタシスの機能が低下し、自律神経系、内分泌系、免疫系など様々な生理的要素に変化が生じ、睡眠障害、食欲不振、性欲減退など抑うつ症状、さらに集中力欠如や易怒性などの心理社会的な反応もみられることがわかってきました。
これらは、慢性痛による中枢系の変化によるものと考えられています。
また、慢性痛は、歪められた痛み情報が脊髄から脳へ伝わり、本来存在しない痛みを脳内で作り出してしまうことも考えられます。
このように「急性痛」と「慢性痛」は時間経過の違いだけではなく、発生機序を考察して、アプローチしていくことが重要になります。
実際に、治療現場においてもなかなか解決しない慢性痛にお悩みのお客様は多いですが、脳に痛みに関するエラーの情報が入力されていることも考慮し、ただ痛い部分を弛めたり、温熱など物理療法的なアプローチをするのではなく、脳に正しい情報が入力されるような運動療法、いわゆるエクササイズアプローチで痛みの改善にもっていくことも重要になってきます。
肩こり・腰痛など慢性的な痛みを抱える方、マッサージに入ってるけどなかなか痛みが取れないとお悩みの方は多いですが、もう一度自分の動きやそれに伴って起こる感覚入力が正しいものなのか、チェックしてみませんか?